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東京地方裁判所 平成11年(ワ)9890号 判決

原告 野澤和子

原告 波多野裕子

右両名訴訟代理人弁護士 野田宗典

同 嶋田雅弘

被告 八木玲子

被告 鈴木啓一

被告 鈴木理弘

右三名訴訟代理人弁護士 本井文夫

同 植村公彦

同 桑山斉

主文

一  被告八木玲子は、原告野澤和子に対し、金一六万八七一三円及び平成一一年五月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告八木玲子は、原告波多野裕子に対し、金一六万八七一三円及び平成一一年五月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告鈴木啓一は、原告野澤和子に対し、金一六万八七一三円及び平成一一年五月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告鈴木啓一は、原告波多野裕子に対し、金一六万八七一三円及び平成一一年五月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告鈴木理弘は、原告野澤和子に対し、金五七万九八四三円及び平成一一年五月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  被告鈴木理弘は、原告波多野裕子に対し、金五七万九八四三円及び平成一一年五月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  原告らのその余の請求を棄却する。

八  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

九  この判決は、第一項ないし第六項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告らは各自、原告野澤和子に対し金二〇九万八九五八円、原告波多野裕子に対し金二〇九万八九五八円及び訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  仮執行宣言

第二事案の概要

一  本件は、原告らが、共有持分を有する不動産につき、同じく共有持分を有する被告らが右不動産から収益を上げているにもかかわらず原告らにその利益を分配しないとして、被告らに対し、不当利得返還請求権に基づき平成元年から平成一一年五月分までの原告ら持分相当額の支払及び訴状送達の日の翌日(被告鈴木啓一及び同鈴木理弘については、平成一一年五月一六日、被告八木玲子については、同月一七日。)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。

二  前提事実

1  鈴木つね(以下、「つね」という。)は、別紙土地目録一ないし三記載の土地(以下、「本件土地」という。)を所有していたが、昭和四三年一一月一二日死亡した。

2  原告らは、それぞれ、つねの六分の一の法定相続分を有する相続人である。

3  被告らは、つねの相続人である鈴木鋭吉(以下、「鋭吉」という。平成六年六月二二日死亡。)の子であり、被告らの他に相続人はいない。

4  鋭吉は、少なくとも平成元年一月以降、本件土地を稲葉文子(以下、「稲葉」という。)及び太田博巳(以下、「太田」という。)に賃貸して収益を上げていた。

三  当事者の主張

(原告ら)

1 被告らが受領した地代は、平成元年以降稲葉分が月額九万三七五〇円、太田分が月額七〇〇〇円であるから、平成元年一月から平成一一年五月分までの総合計は一二五九万三七五〇円であり、原告らは、それぞれその六分の一に当たる二〇九万八九五八円を受領する権利を有する。

2 なお、被告らは、本件土地の固定資産税を支払ってきたと主張するので、原告らが被告らに対して有する、被告らが取得した昭和六三年一二月までの本件土地の賃料のうち原告らが取得すべき部分について成立する不当利得返還請求権を自働債権とし、平成元年一月から平成一一年五月までに発生して被告らが立て替えた固定資産税及び本件土地の管理費の立替金返還請求権を受働債権として、対当額にて相殺する(以下、「本件相殺1」という。)。

(被告ら)

1 つねの死亡後、本件土地の管理について、相続人間で、公租公課等諸経費を鋭吉が全額負担する一方で、地代についてはすべて鋭吉が取得するという内容の合意が成立しており(以下、「本件合意」という。)、被告らに不当利得はない。

2 本件相殺1について

(一) そもそも公租公課は相殺の対象となるものではないし、万一債務を負ったとしても既に一〇年以上を経過し時効消滅していることが明らかであり、被告らは、右消滅時効を援用する。

(二) 不当利得返還請求権は、原告らの損失と相当因果関係がある限りにおいてなし得るものであるから、原告らが被告らの利得として請求する本件土地の地代には、公租公課や管理料の支出がなされているから、原告らの利得は、これらを差し引いたものに過ぎない。

(三) また、前記(一)、(二)の主張が認められなかったとしても、被告らは、本件土地に関し、公租公課及び管理費用の支払をなしたから、本件土地の共有者である原告らに対し、その共有持分に応じてその支払を求めることができるものであるから、これを自働債権とし、原告らの不当利得返還請求債権を受働債権として、対当額にて相殺する(以下、「本件相殺2」という。)。

四  争点

1  本件合意の成否

2  本件相殺1の可否

第三争点に対する判断

一  争点1について

1  本件全証拠によるも、本件合意の成立は認められない。

2  被告鈴木理弘(以下、「被告理弘」という。)は、本件合意の存在を直接知るものではなく(被告鈴木理弘本人)、本件合意についての書証も存在しない。

3(一)  そこで、間接事実によって本件合意の存在が推認できるか否かであるが、つねが鋭吉の世話になっていたことは認められる(被告鈴木理弘本人)ものの、そのことによって本件合意が推認されるものではない。

(二)  また、つねの相続人である川口みつや野澤鍵治(以下、「鍵治」という。)は、鋭吉が本件土地の地代を取得することについて、何ら異議を差し挟まなかったことも認められる(被告鈴木理弘本人)が、川口みつや鍵治が本件土地がつねの所有物であることを知った上で何ら異議を差し挟まなかったとまで認めることはできず、結局本件合意を推認するには足りない。

この点、被告らは、つねは、鍵治の家にもよく出入りして、親しく付き合っていた(原告野澤和子本人)ことから、鍵治やその妻である原告野澤和子(以下、「原告野澤」という。)が本件土地がつねの所有物であったことを知っていたと主張するが、つね自身が本件土地がつねの所有であることを認識していたかどうか定かではない(土地の管理を身内の者に委託していた場合には、ままありうることと解される。)こと、原告野澤も、つねの養女であった行木昭子も本件土地がつねの所有であったことを、平成八年八月に、被告理弘からの手紙で初めて知ったこと(原告野澤和子本人。なお、右供述は、川口孝子は既に本件土地のことを知っていたような口ぶりだったとも供述しているところであり、事実を歪曲しようとするような態度は見いだせず、信用性を肯定できる。)からすれば、被告らの右主張は失当である。

(三)  さらに、被告らは、つね死亡当時、鋭吉の家の生活が決して楽ではなかったことや、本件土地について、鋭吉が所得税の申告をなしていることをもって、本件合意を推認させる事実と主張しているようであるが、いずれも、本件合意を推認させるに足りない。

4  よって、本件合意は認められない。

二  争点2について

そもそも、不当利得返還請求権は、不当利得者が受けたる利益の限度において発生するものであるところ、本件土地の収益から本件土地に関する公租公課や管理費用を控除した額が受けたる利益であり、その範囲でのみ不当利得返還請求権を行使しうるものであるので、原告らの主張のように不当利得返還請求権が、本件土地収入のうちの相続分に応じた額において発生するものではないので、本件相殺1は、消滅時効の援用や、本件相殺2の可否を判断するまでもなく、失当である。

三1  次に、前提事実、証拠(乙一、三の一ないし三、四ないし六及び被告鈴木理弘本人)及び弁論の全趣旨によれば、鋭吉は、平成元年一月以降、本件土地を太田及び稲葉に賃貸し、太田及び稲葉の地代の支払方法は、年二回、八月のお盆ころと一二月の暮れのころに、各六か月分を支払うというものであり、平成一一年五月までには、平成一一年の上半期分の地代は支払われていないこと、右地代は、鋭吉が死亡した平成六年六月二二日までは鋭吉が取得し、その後は、被告理弘が取得していること、平成元年から平成一〇年までの各年度の本件土地の地代収入、固定資産税支払額、都市計画税支払額、管理料支払額は、別紙収支・支出一覧表のとおりであること、よって、平成元年以降鋭吉が本件土地から得た利益は、三〇三万六八五〇円であり、被告理弘が平成六年から平成一〇年までに得た利益は、二四六万六七八五円であることがそれぞれ認められる。

2  原告らは、鋭吉の得た利益のうち、その法定相続分に相当する額、すなわち、六分の一ずつを不当利得として請求する権利を有し、実際には、鋭吉の相続人は、被告三名であるから、それぞれが一〇一万二二八三円ずつ相続し、これの六分の一である一六万八七一三円を、被告らは、それぞれ原告ら各自に支払わなければならない。

また、被告理弘の得た利益についても、原告らはそれぞれ六分の一である四一万一一三〇円を被告理弘から取得する権利を有する。

四  よって、原告らの本訴請求は、原告らそれぞれが、被告八木玲子及び同鈴木啓一に対して一六万八七一三円及び訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の、同理弘に対して五七万九八四三円及び訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから、これらを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法六一条、六四条本文を、仮執行宣言について、同法二五九条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 澤田正彦)

土地目録

一 所在 東京都葛飾区東立石参丁目

地番 七弐八番弐

地目 宅地

地積 参・参〇平方メートル

二 所在 東京都葛飾区東立石参丁目

地番 七六四番参

地目 宅地

地積 参九六・七六平方メートル

三 所在 東京都葛飾区東立石参丁目

地番 七六五番壱

地目 宅地

地積 弐六六・弐八平方メートル

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